2009/07/06

在米日本人女性からのメール 夫の医学部挑戦

前のブログで紹介したB氏の奥さんから詳細なメールが届きました。

奥さんは日本人です。

アメリカでの生活感(観)を率直に書かれています。

日本人は米国社会ではマイノリティであることは日本で暮らしている限り意識することはありません。

しかし米国で暮らすとそうはいかないでしょう。以前、日系三世の女性が指圧の勉強に来ていました。ある日、彼女がしみじみと言ったことがあります。

「日本はいいわ。日本人であることを意識しないでいい。差別されることも無い」

この言葉に大変驚きました。

外国で暮らすということの重さを初めて知った瞬間です。

今回いただいたメールでは日本人女性で米国人男性と結婚し、米国で暮らしている方のものです。

その夫は40代半ばにして医学部を目指すという暴挙。

夫を支えつつ支えられつつ、今回医学部の門に辿り着いた感慨が素直に述べてあります。

これはジャーナリストの文章ではありません。現実にもがいている人の文章です。あるいは彼女の偏見も書かれていることでしょう。そのことは彼女自身も述べています。それを十分にご理解のうえ読んでいただけると幸いです。

以下の文章は彼女からの何通かの私信をわたしが編集して掲載しています。

―B夫人からのメール―

お伝えしてなかったかと存じますが、Bが医学部に入学を果たし(4回目にして補欠から正規入学となった・・・)8月10日を目安に東海岸へ引越する事となりました。ワシントンDCです。これから最低4年間はワシントンでの生活となります。

6年シスコで暮しました。それなりの生活のパターンも出来ていましたから、規模の大きくなる東での生活が多少不安でもありますが、これからもさまざまな事に挑戦して行きたいと思っております。

実はこの朗報は1月に既に手元に届いておりました。が、さまざまな事を考慮して皆様へのご報告が後手後手となりました。なにしろ49歳の学生スタートです。合格はしたものの迷いもあり、今は嬉しさ半分、不安が半分といった所です。

果たして外人妻を抱えながら収入なく、借金で生活出来るのか、現実を直視するのが怖いほど不安で 。勿論、私も落ち着いたら仕事探しに出なくてはいけません。リーマンショック以来、ネイテイブでも職がないのに外人の私に職があるのか。

今現在、恵まれた環境にいるのでそれを捨てていくのは実にもったいないのですが、東でのいい出会いを期待するしかありません。

夫は医学部入学試験の成績は問題ないのですが、ある理由で3年間,補欠のまま医学部入学の望みは叶いませんでした。今年やっとその今ドアが開きました。不安ですが前進あるのみです。また人生の転換期となりました。どうせアメリカ暮しです。根なし草です。いろいろ経験しようと思っています。

3度も補欠合格となった夫です。きっと何度も諦めかけたと思います。今度ダメならMD(医師)ではなくDOドクター オブ オステイオパシー・米国の整体医療の学校に変更していたかも知れません。しかし、本人はどうしてもMDとして働きたかったようです。MDDOとしても働けるが、その逆はならず・・・。やはり自分の理想とする医師の姿がMDでなくてはならなかったようです。MDは自分で状況判断を下せ、リーダーとして働き、処方も出来ます。それに対してDOは現在MDより格付けが下になるもののほぼ同等の活動と給料なのだそうです。

両者の違いは単に可能性だけのようです。つまり一例としてMDは日本で医師として活動出来ますがDOは不可。これくらいしか思いつかないそうです。学校はメッドスクールとはまた違って専門のDOスクールに行かなくてはいけないようです。入学はメッドスクールより容易。

ここアメリカにおいて「平等」とはマイナーな人々に下駄をはかせる事なのだとこの経験を通して悟った私です。平等とは本来のあるがままの姿なのではなく有色人種だったり、シングルマザーであったり、そういった厳しい環境におかれているであろう人々に優しく社会は下駄を差し出し、白人、殊に白人男性と平等にする事がこの国でいう 『平等』なのだと悟りました。

医学部入学においても夫よりMCAT医学部受験でのセンター試験のようなもの)が悪くても有色人種やシングルマザーであればいとも簡単に入学が許されるような現状に歯がゆい思いをして来ました。高得点を取ったからといって入学許可になる訳ではないのです。(三島註:B氏は白人男性です)。

ちなみに白人男性は三角形の底辺に位置するくらい低い優先順位です。でもこればかりはどうしようもありません。夫も言い方を変えれば外人妻を持っているのでマイナーな部類です。年も取っていますからこれとてマイナーな要素です。おまけに太ってもいますから、おっとこれはこちらでは平凡な要素になるのでしょうか。

今回悟ったことは、ともかくいくら成績が良くても人種の壁はどうしようもないという事でした。私はいたたまれずホワイトハウスにも手紙を書きましたし、昨年は彼の志望校にも手紙を書きました。でもドアは開きませんでした。

夫は現在科学雑誌の仕事をしています。雑誌に載せる広告が主な仕事で、割り振りや販売の仕事です。それはそれなりに成功しているのですが、単に広告の切り売りではむなしさが残るようです。それに彼でなくても出来ますしね。彼のよさを発揮してもらうにはハタから見ていても既に医者としての貫禄も備え(三島註:彼女のジョークで年齢や体型のことを言っています)、医薬やサプリの知識にもたけており、他人の事を常に熟慮している医者がベストなように思えます。

夫は今日から住居の下見をかねて東へ飛びました。いい物件が見つかるといいのですが・・・。それでもやはりシスコと比べるとかなりお得な物件が多いようで、というかシスコの物価高が異常なのでしょうが、1000ドルも家賃を出すと共同のプールが庭について来ます。シスコならこの価格なら不便な所でワンルームくらいの値段です。

これからまた山あり谷ありでしょうが若い学生とともに苦難を乗り越えて49年の経験と知識を生かした素晴らしいドクターになって欲しいです。経験に勝るものはないと夫に説いています。

―メールここまで―

オフレコの部分は省略しました。

米国では人種の比率によって採用の比率も決められているようです。それで成績のいい白人男性より成績の悪い有色人種などが優先的に合格するという現実があります。それを身をもって体験されたのですね。

B夫人はこの件に類似した以下のニュースも送ってくださいました。

米国社会共通の問題でもあるようです。

過剰な黒人優遇は逆差別 米最高裁が逆転判決

【ワシントン30日共同】米最高裁は29日、消防士の昇進試験で黒人を優遇した米東部コネティカット州ニューヘブン市の措置は、白人に対する逆差別で容認できないとする判決を下した。

米国では公民権法の下で黒人を優遇する積極的差別是正措置(アファーマティブ・アクション)が長く行われてきたが、判決は人種に基づく少数派優遇の行き過ぎに歯止めをかける内容。今後、全米で採用や昇進の在り方に影響を及ぼしそうだ。

判決などによると、ニューヘブン市で03年に実施された消防士昇進試験の結果、黒人受験者が1人も昇進できなくなった。市当局は人種差別だと訴えられることを懸念し試験結果を破棄。このため白人受験者らは昇進の機会を逃した。

最高裁は9人の判事中5人が、市の行為は人種差別を禁じた公民権法に反すると指摘。「試験に合格し昇進の資格を得た個人に、人種に基づいて損害を与えることは正当化できない」と判断し、下級審判決を覆した。判事4人は判決に反対する少数意見を出した。

2009/06/30 16:13 【共同通信】

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