2010/04/15

医学常識が少しずつ変化

日経メディカルオンラインより


以下引用
=================================
REPORT
2010. 4. 15
本誌連動◇その患者指導、大丈夫?
糖尿病○脂肪を控えてカロリーを減らすべきか
このページを印刷するTwitterでつぶやくソーシャルブックマークこの記事を友達に知らせる


糖尿病患者に低カロリー低脂肪食を勧める。うつ病患者に心身ともに休養してもらう。妊娠中に体重をなるべく増やさないようアドバイスする──。あなたは日々の診療でこんな生活指導を繰り返していないだろうか。

「常識」と思われてきた生活指導の中には、実は根拠がなかったり、新たなエビデンスが出て考え方が変わってきているものも多い。さらには、高血圧患者に対する厳格な塩分制限など、現実的には実行不可能な指導もある。本特集では、従来の「常識」を最新の文献を基に徹底検証し、エビデンスに基づいた効果の高い指導を紹介する。

「糖質制限食にすれば、糖尿病の血糖コントロールは確実に良くなる。肥満患者の減量にも高い効果があるのを実感した」。中村整形外科リハビリクリニック(兵庫県川西市)理事長の中村巧氏はこう話す。

糖質制限食とは、1日の食事の中でパンや白飯、麺類といった主食の摂取回数を制限し、炭水化物の摂取量を減らすというもの。炭水化物の摂取量に着目した点で、カーボカウントと同様の考え方に基づいている。

同クリニックでは、1日の摂取エネルギー量を12001600kcalとした上で、炭水化物の摂取量を制限する食事指導を行っている。患者本人や管理栄養士らと相談しながら、「朝食を抜く」「夕食時のみ主食を抜く」といった形で、炭水化物の摂取回数や量を決める。炭水化物を摂取しない分、おかずの量を増やしてもよいが、カロリーや脂肪の過剰摂取にならないよう工夫している。「糖質制限食は糖尿病や肥満患者に対し、高い効果がある」と話す、中村整形外科リハビリクリニックの中村巧氏。

同氏は2003年から、自院の肥満外来の患者約1000例に対し、この糖質制限食を運動療法と併用して行っており、半数以上が5%以上の減量に成功したという。「カロリーだけなく炭水化物を減らす食事療法は、コントロール不良の糖尿病を合併している肥満患者に対しても高い効果を認めた」と中村氏は話す。

同じく糖質制限食を実践する高雄病院(京都市右京区)理事長の江部康二氏は、「血糖値の上昇に最も影響しているのは糖質の摂取量。炭水化物の過剰摂取はインスリンの追加分泌を促して肥満の原因にもなるため、糖質制限食は減量にも効果がある」と説明する。

糖質制限食でHbA1cが低下
実は、糖質制限食の歴史は古く、インスリンが登場する以前に、糖尿病患者の尿糖値を低下させる食事療法として行われていた。その後インスリンなどの登場によって、血糖値は薬でコントロールできるようになった。一方で、高脂肪食による動脈硬化性疾患のリスクや、過剰エネルギー摂取に伴う体脂肪の増加を問題視する声が高まった結果、「糖尿病の食事療法を行うに当たって、血糖コントロールに加えて動脈硬化の予防も重要視するようになってきた」と神奈川県立保健福祉大教授の中村丁次氏は説明する。

そのような背景から、現在の食事療法では、個々の病態や身体活動などに応じて摂取エネルギー量を制限することを目標に置き、脂肪摂取を控え、摂取エネルギー量の5560%を炭水化物から摂取すべきとされている。これに対し糖質制限食は、血糖の低下を主目的とし、炭水化物の比率を2030%に抑える。

2型糖尿病患者に対する糖質制限食の血糖抑制効果は、メタ解析で検証されている(図1)。2型糖尿病患者を対象に行われた糖質制限食に関する論文を分析した結果、各研究で実施された食事療法の、摂取エネルギー量に占める炭水化物の比率が低いほど、HbA1cが低下する傾向にあることが示された。

19802006年に発表された、成人2型糖尿病患者に行われた糖質制限食に関する論文13報を分析。摂取エネルギー量に占める炭水化物の比率が低いほど、HbA1cの低下が認められた。GJはデータなし。(出典:JAmDietAssoc2008;108:91-100.
また、糖質制限食の減量効果についてもランダム化比較試験で検証されている(図2)。322人の肥満患者(平均年齢52歳、平均BMI 31)を対象に、糖質制限食、地中海食、低脂肪食のいずれかの食事療法を行ったところ、糖質制限食群では、低脂肪食群に比べ体重が有意に減少し、その差は2年後も継続した。

低脂肪食群と地中海食群(野菜、オリーブオイルなどが中心)はカロリー制限した。低炭水化物食群はカロリー制限せず、1日当たりの炭水化物摂取量を初めの2カ月は20gに抑え、以降は120gまで徐々に増量。糖質制限食群の体重は低脂肪食群に比べ有意に減少した。(出典:NEnglJMed2008;359:229-41.

長期安全性も示唆
とはいえ、炭水化物の摂取量を減らすと、摂取エネルギー量に占める脂肪の比率が相対的に高くなることから、心血管イベントのリスクの上昇を懸念する向きもある。

これに対しては、糖質制限食の長期安全性を示唆する次のような研究がある。1980年に食事調査を行った米国の女性看護師約8万人を、20年間追跡調査した結果、炭水化物の比率が最も低い糖質制限食群(炭水化物29.3%以下、脂肪46.9%以上)と、炭水化物の比率が最も高い「低脂肪食群」(同56%以上、同26%以下)の冠動脈疾患リスクは同等だったことが判明した(N Engl J Med 2006;355:1991-2002.)。ただ、糖質制限食の栄養バランスについてはまだ不明な点も多く、今後さらなる検証が必要だ。

個々の病態に配慮を
効果的な糖質制限食だが、もちろん万能ではない。「肥満を伴う糖尿病患者に対しては、やはりカロリー制限による減量が第一。肥満を伴わない糖尿病患者には、糖質のコントロールも有用と考えられる。それに加えて、血圧や中性脂肪など、それぞれの患者のリスクを勘案して指導する必要がある」と神奈川県立保健福祉大の中村氏は話している。

また、「糖質制限食は相対的に高蛋白・高脂肪になるので、血中クレアチニンが高値で腎障害がある場合や活動性膵炎の患者は適応とならない」と江部氏は言う。薬物治療中の糖尿病患者では、炭水化物の摂取量が少ないと低血糖を起こすことがあるので注意が必要だ。
==============================
引用以上

医科向けのサイトですから専門的で難しいところもありますが、概ね理解できます。

科学は常に転換するところに価値があるとは言え、健康問題は安定的であって欲しいものです。昨日までの常識が明日の非常識なることは珍しくありません。ここが相対的な科学の科学たる所以でしょう。宗教のように「最初に絶対的真理あり」ではありません。

医学常識が変わると何を信じていいのか分からないと不安になりますが、もともと危険域にある訳ではないので深く心配する必要はありません。
同時に常識も常に疑ってみることが必要ですね。

0 件のコメント: