2010/06/01

鍼の局所的効果の作用:adenosine A1受容体の関与

内科開業医のお勉強日記というサイトに表題のエントリーが掲載されていました


医家向けで難解ですので一般向けニュースも紹介します。

はり治療、アデノシン放出で痛み緩和 米研究
【5月31日 AFP】はり治療は、アデノシンとよばれる物質を放出させることで体の痛みを和らげているとする研究が23日、米ロチェスター大学メディカルセンター(University of Rochester Medical Center)の研究者らによって米科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス(Nature Neuroscience)」上で発表された。
 このメカニズムは、マウス実験で明らかになった。研究チームは、マウスの右前足に炎症を引き起こす薬剤を注射。その後、マウスのひざの中心線の下部、「足三里(Zusanli)」と呼ばれる部分に細いはりを刺した。
 研究者らは、通常のはり治療と同様に、5分おきにはりをゆっくりと回転させる行為を30分にわたって行った。その結果、行為中と行為直後には、はりが刺さっている周囲の組織に含まれるアデノシン量が実験前の24倍となったという。また、体を触った際や熱に対する反応時間から計測したマウスの不快症状の度合いは3分の1に減っていたという。
 遺伝子操作によってアデノシンを除去したマウスでも同様の実験が行われたが、はり治療の効果はなく、マウスははりを刺す前と同様、不快な症状を示していた。
 研究チームは次に、白血病治療薬のデオキシコホルマイシンをマウスに投与する実験を行った。デオキシコホルマイシンは、体の組織がアデノシンを除去するのを防ぐ役割をもつ。実験の結果、マウスの体内に蓄積されたアデノシンは、はり治療の効果時間を約3倍にしたという。 
 はり治療に関するこれまでの研究では、末梢神経系よりも中枢神経系における効果に重きが置かれてきた。中枢神経系では、はり治療を行うことによって脳にエンドルフィンとよばれる痛みを緩和する強力な化学物質を生成するよう命令が出るとされている。(c)AFP

 アデノシンは遺伝子の塩基として遺伝情報のコードに関係しているそうです。それ以外にATP(アデノシン三リン酸)やADP(アデノシン二リン酸)の一部としてエネルギー輸送に欠かせない物質です。今回マウスの実験でアデノシンが鎮痛にも関与していることが解明されたのです。これは鍼にとっては福音となる研究です。


 中枢では脳内にエンドルフィンという鎮痛物質を出すことは知られていましたが、末梢ではアデノシン。鍼の効果は単に暗示だけではないということが分かりました。実際の治療ではこうした生体内での化学反応や触れると言う心理効果、言葉かけによる暗示など複雑に絡み合って効果を生み出していることでしょう。こうなるとその科学的証明は大変難しくなります。しかし、明らかな生化学的効果を増幅するのが治療の技術です。


 こうした研究はぜひ続けてもらいたいものです。



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