2010/09/06

太極拳が線維筋痛症の症状軽減とQOL改善に有効

日経メディカルオンラインに興味ある記事がありました。
線維筋痛症に太極拳が有効であるという報告です。
これは以前にもどこかで読んだことがあります。


太極拳はその動作に効果を生む何かがあるというよりゆったりと呼吸に合わせて動くという点が重要です。
ゆったり深い呼吸をしながら動くとき副交感神経が優位になります。
これは身心をリラックスに導きます。
これが線維筋痛症の痛みにも有効なのではないでしょうか。


この報告にはストレッチとの比較が出ています。
多くのストレッチを行っている人を観察すると強くストレッチし過ぎているように見受けられます。痛みを生じながら筋肉を伸展すると却ってストレスを生じてしまいます。これはヨガをやる人にも言えることです。
太極拳のように深い呼吸と共にゆったりのんびり、揺蕩う(たゆたう)ような動作に価値があるのでしょう。


翻って鑑みるに、わたしの指導している経絡導引にも太極拳と同様の効果を生み出す可能性があります。今後に期待が持てますね。
 



 日本でも線維筋痛症に対する関心が高まっている。欧米では一般に、薬物療法に認知行動療法、教育、運動などを組み合わせた治療が行われている。米Tufts大学のChenchen Wang氏らは、無作為化試験を行い、薬物療法を受けている患者が太極拳を行うと、症状の軽減やQOL改善が見られることを明らかにした。論文は、NEJM誌2010年8月19日号に報告された。

 先に行われた小規模な非無作為化試験は、線維筋痛症患者の症状軽減とQOL向上に太極拳が役立つことを示唆していた。そこで著者らは、線維筋痛症患者の身体機能と精神面に太極拳が及ぼす影響を評価する、より規模の大きい無作為化試験を行うことにした。

 07年7月から09年5月まで、Tufts大学医療センターで、米リウマチ学会の90年の診断基準に基づいて線維筋痛症と診断された21歳以上の患者を対象に単盲検試験を実施した。66人(平均年齢50歳、86%が女性)の患者を登録、無作為に古式楊式太極拳(33人)、または、線維筋痛症患者の健康管理に役立つ教育+ストレッチ(33人)に割り付けた。治療薬の投与はそれまでと同様に継続した。

 両群ともに60分のセッションを週2回、12週間行った。太極拳群には、DVDを見ながら自宅で毎日20分以上太極拳を実践するよう指導し、教育+ストレッチ群にも毎日20分以上自宅でストレッチを行うよう指示した。

 主要エンドポイントは、12週の時点の線維筋痛症質問票(FIQ)のスコアに設定。FIQは、痛みの強さ、身体機能、疲労、こわばり、うつ、不安などについて評価する自己申告式のスコアで、合計は0から100の範囲。高スコアはより重症であることを意味する。2次エンドポイントは、QOL指標であるSF-36の身体機能面のスコアと精神的健康面のスコアなどとした。SF-36は、高スコアほど状態良好を意味する。

 なお、割り付けられた治療が終了した後も反応が持続するかどうかを調べるために、24週時にも同様の評価を行った。

 登録された患者の線維筋痛症歴は平均11年だった。セッションへの参加率は、太極拳群が77%、教育+ストレッチ群が70%だった。


 12週時点で、太極拳群ではFIQスコアに臨床的に意義のある改善が見られた。ベースラインと12週時のスコアは、太極拳群が62.9±15.5と35.1±18.8、教育+ストレッチ群では68.0±11と58.6±17.6だった。両群のベースラインからの変化量の差は-18.4ポイント(95%信頼区間-26.9から-9.8、P<0.001)となった。

 同様に、ベースラインと12週時のSF-36の身体機能スコアは、太極拳群が28.5±8.4と37.5±10.5、教育+ストレッチ群では28.0±7.8と29.4±7.4で、両群間の変化量の差は7.1ポイント(P=0.001)だった。

 SF-36の精神的健康スコアは、それぞれ42.6±12.2と50.3±10.2、37.8±10.5と39.4±11.9で、変化量の差は6.1ポイント(P=0.03)だった。

 太極拳群では睡眠の質(PSQIを用いて評価)や疼痛の程度(VASを用いて評価)も有意に改善していた。

 太極拳群に見られた改善は24週時まで維持されていた。ベースラインから24週時までのFIQスコアの変化量の差は-18.3ポイント(-27.1から-9.6、P<0.001)。睡眠の質、疼痛の程度、SF-36の身体機能、精神的健康スコアなどについても、12週時に見られた改善は維持されていた。

 臨床的に意義のある改善(FIQスコアが8.1ポイント以上減少と定義)があった患者の割合は、太極拳群で多かった。12週時には太極拳群で79%、教育+ストレッチ群では39%(P=0.001)、24週時にはそれぞれ 82%と53%(P=0.009)だった。疼痛、睡眠の質、SF36スコアなどにおいて意義のある改善を示した患者の割合も、太極拳群で有意に高かった。

 有害事象の報告はなかった。

 太極拳は線維筋痛症患者にとって安全で有益と考えられた。著者らは、より規模の大きな長期的な試験を行って効果を確認する必要があると述べている。

 原題は「A Randomized Trial of Tai Chi for Fibromyalgia」、概要は、NEJM誌のWebサイトで閲覧できる。

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