2012/11/28

名古屋市高年大学鯱城学園資料


本日は鯱城学園健康課の授業を行って来ました。
来年二月には生活科A・Bと二回行います。

blogにテキスト掲載します。資料保存のためです。長いので読まなくて結構です。
教室ではこれに加えて薬膳の一般的資料を渡しました。

エビデンス重視の時代にこれといったエビデンスのない東洋医療。どこまでを説明していものかいつも悩みます。今日の目で見ても問題ないところはしっかり抑え、伝説として読み飛ばすところは無視。陰陽五行は弁証法と関係性のモデルとして説明。

経絡は体操による実感を根拠とする。
そんなところです。

時間は一時間半と短いので概論に加えて少し実技で終了。
皆さん楽しかったと喜んで下さったようです。


東洋医療入門 
経絡導引体操・呼吸法・季節に応じた養生法
鍼灸指圧師 介護支援専門員 介護予防運動指導員
三島広志
目次
はじめに
1.   東洋医療の基本思想
2.   東洋医療の生理学
3.   経絡的身体観
4.   四季と健康
5.   東洋医療の方法
6.   経絡(けいらく)
7.   経穴(けいけつ・ツボ)
8.   自分でできる経絡経穴呼吸法

はじめに
西洋医学の起源は古代ギリシア(紀元前2600頃から紀元前30頃)のヒポクラテス(紀元前460~?/後述)とされている。その後、古代ローマ(紀元前753から紀元1453)において学問として確立された。レオナルド・ダ・ヴィンチに代表されるルネサンス(人間復興)期(十四から十六世紀イタリア、宗教支配の強かった神中心時代から人間中心へ移行する運動)に人体に対する実証的な研究が始まり、その後デカルト(1596から1650)の心身二元論に基づき近代医学として発達した。

十九世紀後半、細菌の発見により医学は飛躍的に進歩し、二十世紀に入り抗生物質やステロイド剤が登場、多くの病気に対し、飛躍的な治療が可能となった。検査法もレントゲンから内視鏡、超音波、CTMRIPETなどの発明により体内の様子が手に取るように診察できるようになった。さらに遺伝子の領域での医学も急速に進歩して未来へ開かれた医学が期待される。

一方、東洋医療とはアジアを中心として東洋独自の発達をとげた伝承医療である。体系だった東洋医療にはイスラムのユナニ、インドのアーユルヴェーダ、中国の中医学、韓国の韓医学、日本の漢方(漢の方法もしくはその方向の意)などがある。韓医学も漢方も中国から伝わり、それぞれの国の歴史の中で独自に変化してきた。

近代になって中国と韓国は国家レベルで理論や技術の整理統合を行い、中医学や韓医学として体系立てられたが、日本では残念ながら各流派で独自の主張を行なっているのが現状である。したがって今日、世界の東洋医療の主流は漢方ではなく論理の整合性から中医学となりつつある。

こうした民間医療は自然科学のフィルター(客観性、論理性、統計、実験による帰納的再現性など)を通すと西洋医学見地から無効性や有効性の判別の後、現代医療の一部として採用もしくは有害として排除される。それでも今日に伝わっているのは医療的効果や文化的側面から一般の支持があるからである。

西洋医学の目覚しい進歩とそれに基づいて社会構造に組み込まれた医療制度は医療、保健、予防、介護、福祉など幅広い側面から今日の日本人の健康に大きく寄与している。

しかし、その組織の整合性が進むに連れ、逆に詰屈な医療制度となる傾向も見受けられる。制度からはみ出した病人は医療などの対象とならないという現実がある。近年、こうした現状の中で制度や組織としての対応ではなく、多様で個性を有した個々人に対する一対一の手作り医療である伝統医療の存在がクローズアップされてきた。

幸い、生命に関わる危険な病気の多くは西洋医学によって相当に駆逐された。また、その困難な病気に対する治療手段も日々発展しつつある。そうした西洋医学の下部構造に支えられた上でこれからの東洋医療のあり方を目指したいものである。

生命には全ての生き物や人に共通する普遍性がある。同時に個体による多様性や個性もある。医学は普遍性を解き、医療は多様性に対応することで成立している。

東洋医療は伝統に基づいた思想や技術を駆使し、危険な方法は排除し、これからさらに人々の健康や保健、予防や介護に寄与できると確信している。

1 東洋医療の基本思想
○大宇宙と小宇宙
古代中国では環境(大宇宙・大我)と人体(小宇宙・小我)の調和を尊んだ。人体は自然の中にあって、自然を素材として生まれた。体は日々、環境を取り込み、環境へ排出することで生存しているのだ。したがって大宇宙である環境と小宇宙である人体との調和が大切である。これを天人合一という。

○陰陽説

太極図

万物の成り立ちを、陰(沈静、静寂)と陽(活動、活発)に分けその関連で理解する。

陰 地 秋冬 夜 女 寒 暗 静的 下 内 臓 抑制 衰退
陽 天 春夏 昼 男 暑 明 動的 上 外 腑 興奮 昂進

この考え方は西洋哲学の弁証法に類似している。陰陽は分類ではなく現象はそれぞれの性向が互いに干渉し合い常に変化しているという見方である。
 ・矛盾
・対立物の相互浸透
・量質転換
これらが弁証法の基礎となる考え方である。

 陰陽もそのシンボルマークが示すように絶えず流動している。陰陽とは決して二分法ではないことに注意したい。

○五行説
五行とは木・火・土・金・水の五つの性質の関係性によって世界が成り立つという考え。古代中国で発生、整理されたもので易、医療、政治、経済、戦争など汎用的にこの法則を用いる。以下の図のように森羅万象が複雑に関係していることを示す。

五行関係図

内臓と五行

内臓も五行の関係で説明される。ただし現実にはこの通りいくわけではない。むしろ五行に拘泥することは危険である。五行から学ぶことは関連性である。五行は万象は互いに関連し合っていることを象徴的に示していると考えよう。

内臓  肝 胆
   心 小腸 (心包・三焦)
   脾 胃
   肺 大腸
   腎 膀胱

付記:ヒポクラテスの分類
ヒポクラテスの医学は東洋医療の考え方に酷似している。伝統医療が呪術から脱却するための方法論は共通するのだろう。以下にあるサイトからヒポクラテスの紹介をする。

ヒッポクラテス(前460年~?)の医学の特色はつぎのとおりである。

病状を正確に観察し記述する。
病気よりも病人の現状を全体としてとらえ,将来の経過を正しく予知しようとする。
環境条件が病気の発生や経過さらに人の体質気質に及ぼす影響を明らかにし,病気を自然現象として見る。
粘液や胆汁などのいわゆる体液によって発病のメカニズムを合理的に説明しようとする。
骨折や脱臼などの負傷に対し独特の包帯のしかたや整復のための補助器具を説く。
病気の治療法としては自然の回復力を重視して食品法を主にし,それを病人の状態に合わせて指定する。

以上のような彼の学説は,要するに,病気を生物に起こる自然現象として土地や気候を含む環境全体の中においてとらえ,それに彼特有の合理的な説明を与えたもので,そのおかげで医学はそれまでの巫術的な治療法や独断的な教条になりかねない哲学から独立した一つの学となったと考えられる。
また医師の倫理の面でもいわゆる〈ヒポクラテスの誓い〉が,後世彼の名とともに繰り返し語られることになった。

ヒッポクラテスの学説の中で,体液による病気発生のメカニズムを説明した体液論は,とくに彼の女婿のポリュボスの作とされている〈人間の自然性について〉の中で体系化され,血液,粘液,黒胆汁,黄胆汁のいわゆる四体液説となった。

早稲田大学人間科学部人間健康学科
めかた医院HPより引用

2 東洋医療の生理学
○気血水
身体を循環するいのちに不可欠のもの。循環がスムーズであれば健康、滞れば病気となる。
 
(生命エネルギー、いわゆる活力や勢力である)。古典では以下の様に分類されている。

先天の気
元気:親から受け継いだ気で腎間の丹田にあって生命を支える。原気、真気ともいう。

後天の気
呼吸や食物から取り入れる気・水穀の気または水穀の精微
宗気:胸に存在し肺や心の働きを調整する。
営気:血脈を介して栄養を巡らせる。
衛気:体表を覆い、外邪の侵入を防ぐ。
 
(血液。栄養分を全身に運ぶ。肝に蔵され、心の作用で全身を巡る) 
(血以外の水分。全身を潤している。津液。津はさらさらした水、液は粘度のある水)

○三宝
気・精・神のこと。身体を根本から調整している。命そのものと考える。

:先述。
:先天の元気と後天の気、つまり水穀の精微をもとに腎が作る。命の源。
:各臓器に存在し生命活動を司る。
肝の魂・心の神・脾の意・肺の魄・腎の志

病気の原因
病気の原因には身体内に基づく内因と外部環境の変化である外因。どちらにも属さない不内外因、遺伝的素質である素因がある。

○内因
人間の感情で七情のこと。それぞれの感情が内臓と結びついていると考えられている。内側から傷つけるので内傷という。

:心気が緩み血の通り道が弛緩   
:肝気上昇。血も逆行。
:肺気消耗。意気消沈。
:脾気結滞。運化作用停滞。
:肺気衰弱。
:腎気落下。腎気が留まらない。
:腎気混乱。神が心に留まらず。

これらの感情を極端に持ったり、あるいは長時間その状態にあると病気になるとされる。

○外因
環境にからの影響で「風(ふう)」「暑(しょ)」「湿(しつ)」「燥(そう)」「寒(かん)」「火(か)」で、「六淫(ろくいん)」とも呼ばれる。
「風」は風というより不可視な影響力で、今日明らかにされた細菌やウイルスも含まれると考えられる。

風邪:風が頭部・肺経・肌膚を犯すこと。
寒邪:冬の寒さや夏場の冷えによる。陽気を障害しやすく、気血水に影響し、経絡の攣縮により疼痛などを引き起こす。他の邪を伴うことが多い。(風寒・寒湿・風寒湿など)
暑邪:夏を中心とした季節に起こる。炎熱の性質があり気陰を損傷する。上半身が犯されやすい。
湿邪:梅雨時。気の昇降運動を阻滞し、脾の運化を傷害しやすい(湿困脾胃)。下半身を犯される。
燥邪:乾燥する秋に多い。陰液を消耗し乾燥させる。熱象を伴うものを温燥、寒象を伴うものを涼燥と呼ぶ。
熱邪:熱性、陽性の実証を発生させる病邪。(火邪・温邪とも称する)温熱の邪は上から感受し、肺を犯し、化熱する。熱中症。

疫れい(えきれい)
外因だが六淫に含まれない感染的、流行的影響力。今日的見地からすると細菌やウイルスと考えられる。

○不内外因
素因・内因・外因いずれにも含まれないものを不内外因という。これも内傷である。
 労逸:労力、心労、房事、安逸の過多。
 五労:久視(心・血・目)、久臥(肺・皮膚)、久座(脾・肌肉)、久行(肝・筋肉)、久立(腎・骨)
 飲食失節:偏食、食中り、飢餓、過食
 外傷
 痰飲血:津液と血液の停滞

○素因
生まれながらの遺伝的要因。

3 経絡的身体観
〇いのち
いのちは単独で存在することはできない。わたしたちは、いのちを包んでいる外の環境との交流によっていのちを保ち、次代に引き継いでいる。

○海と陸と空
わたしたちの身体は外の環境を内の環境に取り込むことで生存している。肺(呼吸器)は呼吸を通じて空と交流し、胃腸(消化器)は摂食により大地の恵とつながる。さらに生命の誕生した海は血液やリンパ(循環器)として体内に蓄えられた。このように生命体は外の世界との調和と交流を保つことでいのちを育んでいる。

肺は身体の中のであり、腸は身体の中のである。そして血液は身体の中のなのである。

○からだはまるごと一つ
身体は手や足や胃や心臓などの部分や部品の寄せ集めではない。両親から受け継いだひとつの細胞が60兆に分裂して成り立っている。もとはひとつだったのである。それらが効率を求めてさまざまな組織や器官に分化した。しかしそれらは絶えず全体の調和を保っていなければならない。経絡はその調和を維持する筋道、経穴(ツボ)はその調整点である。

○経絡と経穴 
古典ではわたしたちの身体には気血が循環しており、その流れるルートが経絡(けいらく)、そのなかの重要なポイントが経穴(ツボ)であると説く。これらは西洋医学では解明できていない存在だが、体験的にも実験的にも実感できる確かなものである。体表からの刺激による東洋医療はこの経絡経穴の調整を根幹として成立している。まだ動作時、経絡を意識すると滑らな動きが可能となる。合気道や日舞、太極拳などの動きは経絡動作と呼べる。

○身体構造
外から衛気、皮毛(肺)、血脈(心)、肌肉(脾)、筋肉(肝)、骨(腎)となる。

 前面 陽明(胃・大腸) 
太陰(脾・肺)
 側面 少陽(胆・三焦) 
厥陰(肝・心包)
 後面 太陽(膀胱・小腸) 
少陰(腎・心)

4 四季と健康
東洋医療では大宇宙である環境と小宇宙である人体の調和をいかにはかるかということが、日々の養生にとって重要であると考えられている。したがって四季に応じた生活や行動が大切となる。漢方の古典では以下のように述べられている。

~漢方の古典『黄帝内経』の「素問:四気調神大論篇」より~

 発陳 春陽上昇潜気発散 万物発生 遅寝早起 早朝散歩 意欲発揚 肝気

 藩秀 繁栄華美 陰陽両気交合 万物花咲き実る 早起 愉快不怒気 心気

 容平 成熟結実 容(かたち)平定 早寝早起 平静保持 肺気

 閉蔵 陽気潜伏 結氷凍裂 早寝遅起 日照起床 意思潜隠 不汗守陽 腎気

5 東洋医療の方法
東洋医療には、人体に外から刺激を与える方法、内から薬として作用する方法、日々の養生などさまざまな方法がある。

○診察法
悪いところを暴き出すのではなく、苦しみに共感する。

 外から顔色や舌の色等をぼんやりと見て診察する。
 臭いや声の感じで診察する。
 質問して診察をする。
 脉や経絡などに触れて診察する。じっと手を当て、静かに切り込むように沈めていく。深部で共感する。

○外からの働きかけ
身体の陰陽虚実などの状況に合わせて経絡や経穴、筋肉や皮膚への刺激を体表から加えて治療する。直接身体に触れない治療もある。

鍼 金属の鍼を用いて経穴を刺激し気血の流れを改善する。皮膚に接触するだけの方法もある。国家資格であり、はり師のみに許されている。

灸 ヨモギの繊維を体表に置き燃やす。間接的に燃やしたり、焙る方法もある。国家資格であり、きゅう師のみに許されている。自分や家族に行うことは問題ない。

按摩 源流はインドとされ、中国で発達したマッサージの一種。経絡の気血の循環を助ける。按は押すこと、摩は摩ること。国家資格であり、あん摩マッサージ指圧師のみに許されている。但し、自分や家族に行うことは問題ない。

指圧 按摩の圧迫法と米国渡来のカイロプラクティック、それに日本古来の活法を元に大正時代に生まれた。国家資格であり、あん摩マッサージ指圧師のみに許されている。

*指圧の三原則
垂直圧
身体に垂直に圧を加える
持続圧
通常数秒間同じ圧を持続する
精神集中
精神を集中して圧を加える

外気功 近代になって中国で生まれた言葉。気功師が手をかざして患者の気を調整する。
(中医理論に基づいて行なうのが本流である。日本では資格が無くても開業できるのでインチキ気功士に注意)

○内からの働きかけ
身体の陰陽虚実寒熱などの状況に合わせて複数の薬草を調合して治療する。処方は医師と薬剤師のみに許されている。

湯液 漢方薬のこと。数種類の薬草を体質に応じて用いる。

○養生 未病を治す
先天の気(元気)の保持、後天の気(水穀の気)の補給。日常生活の中で、心身の健康状態を維持し、長命を得るように心掛ける。親からの先天の元気を維持し、未病を治すことを理想とする。

導引 呼吸 体操 瞑想など。
食事 医食同源 中医理論に基づく。
内気功 太極拳や導引を含む。外気を取り込み、身体内を巡らせる。
バラモン導引・天竺按摩といって、どちらもインドから来たとする説もある。
汗吐下和 身体内の毒素を汗や、嘔吐、排便で排出する。和は弱った病人の場合は大きな反応を起こさせないこと。

6 経絡(けいらく)
内臓の名前を冠された十二の経絡が全身を網のように巡っている。経絡はいのちの働きに関連する生理作用や運動作用、感情などに関わっている。科学的根拠はないが経絡動作で実感できる。

○天の気導入 呼吸
肺経 胸から親指先まで 呼吸に関連 天の気を取り込む 雰囲気を感じ取る 悲しみに関連
大腸経 人差し指から肩を通って鼻まで 呼吸や排便 皮膚に関連 深呼吸をする時啓く

○地の気摂取 消化発酵
胃経 眼とこめかみから喉を通って乳頭を下り、太もも前面から脛の外側、足の人差し指まで 食物摂取 噛み飲み込み消化する 地の気を取り込む 欲望に関わる
脾経 足の親指から脛や太ももの内側を昇って腋の下まで 消化腺に関連 糖尿病や膝の痛み 思いに関連 万歳をすると啓く

○選別と中心化 心(ココロ)
心経 腋の下から肘の内側を通って小指の先まで 心 精神の要 喜びに関連
小腸経 小指から肘の内側を通って肩の裏、肩甲骨を経て頚を昇り耳まで 食物を栄養に転換して吸収 腕組みをすると啓く

〇いのちの源 自律神経系とホルモン系
膀胱経 目頭から頭、後頚を経て背骨の脇を下り、太ももやふくらはぎの裏側を通り足の小指の先まで 背骨を支え自律神経を調整する
腎経 足の裏から脛や太ももを上り腹の中心やや外を通って鎖骨内端まで ホルモン系の調整 元気(親から受け継いだいのち)の宿るところ 驚き、恐れに関連 前屈すると啓く

〇気血の循環 免疫
心包経 胸から腕の内側を通り前腕の中央、手のひらの真ん中を通り中指先まで 心臓などの循環機能 両腕を左右に広げると伸びる 栄養を運ぶ
三焦経 薬指先から腕の後側、肘頭、肩を経て耳の裏から眉毛の外端まで リンパ、免疫など防衛機能 熱を焦がして体温を維持する 自分を抱くと啓く 

〇決断と行動 筋骨
胆経 目じりから側頭部後頚部、肩を通り体側を下って足の薬指の先端まで 関節や筋肉などの支持器官の運動に関与 肝っ玉 肚 決断を生む 
肝経 足の親指から足の内側を経てわき腹まで 行動力の源 解毒 怒りに関連 身体を捻ると啓く

7 経穴(けいけつ ・ ツボ)
古典的には全身に365穴あり、次々に新穴が発見されている。経穴(ツボ)は、身体の内外を交流するポイント。治療などに応用される。
経穴(ツボ)は通常はつぼんでいる。つぼんでいるからツボである。必要に応じて現れるが入り口は警戒してつぼんでいる。壺・莟・蕾・窄と語源が同じ。上手に触れないと開かない。経穴は中国の名前。穴も八の字のごとく入り口が閉じている。(ツボの位置を覚えて闇雲に押しても調整にはならない。身体に和す触れ方が重要)

○触れると触る(ふれるとさわる)
ツボはそっと触れることが大切。東洋医療では触れることを切という。異常を探り当てる触(さわ)り方と相手に共感するように触(ふ)れるのは全く異なる。には親切哀切大切切々などのように、大切なものに深く切り込んで共感するという意味がある。ツボはそうした触れ方によって啓く。

○重要な経穴(治療・診断・予防)
肺経  中府 尺沢 列缺 少商
大腸経 合谷 手の三里 曲池 迎香
胃経  地倉 気戸 天枢 梁丘 足の三里
脾経  隠白 商丘 三陰交 漏谷 血海 腹結 大横 
心経  極泉 神門 少府 少衝
小腸経 少沢 後谿 養老 肩貞 肩外兪 聴宮
膀胱経 睛明 天柱 風門 腎兪 委中 承山 
腎経  湧泉 照海 復溜 兪府 
心包経 曲沢 門 内関 労宮
三焦経 中渚 陽池 外関 天 絲竹空
胆経  瞳子 風池 肩井 居 丘墟
肝経  太衝 中封 曲泉 
督脉  大椎 百会 神庭 
任脉  会陰 曲骨 気海 水分 中

〇四総穴 
 「肚腹は三里に留め、腰背は委中に求む、頭項は列缺に尋ね、面目は合谷に収む」『鍼灸聚英

列缺(肺経)・・・頭項
合谷(大腸経)・・・面目 
委中(膀胱経)・・・腰背
足の三里(胃経)・・・肚腹

8 自分でできる経絡経穴呼吸法
○鍼
爪楊枝を10本ほど束ねて、皮膚が赤くなるまで軽く叩く。
例:咳の場合は胸から肩にかけてまんべんなくツボ絆創膏(マグレイン・ピップエレキバンなど)を貼布する。

○灸
ドライヤー・せんねん灸・カイロ・電気温灸器などで温める。
例:腰の疲れた場合は、臍の周辺や腰から殿部にかけて 

○自己指圧 
自分で経絡を流すように指圧をする。触れ方が重要。無理にゴリゴリ押して皮膚や筋肉や血管を傷めないことが大切。
例:疲れ目 頭重 肩こり
いずれも首・肩・上腕の気血の流れの滞りから生じる。大腸経と肺経の経絡を指圧して気血の流れをよくする。
例:腰の疲れ
帯脈(奇経)の調整。天枢(胃経)帯脈(胆経)志室(膀胱経)を中心に行なう。

○経絡導引
深い呼吸とともにのびやかに身体を動かすことで、経絡が展開し、気血水の巡りを整える。十二の経絡について行なう。身体の中を水が流れるように。(一般的なストレッチのように筋肉を伸ばすことや、ヨガのようにポーズをつくることが目的なのではない)

○呼吸法
外の気を体内に取り込む。内の汚れた気を体外に排出する。
深くゆったりと、吐く息を長く行なう。
鼻から吸う。仙骨から下腹部(丹田)に吸い込む意識で行なう。 
*丹田:身体における意識や行動の中心とされる。丹田には上中下の三つがある。精神の中心が眉間にある上丹田、情感の中心が胸の中丹田、呼吸において特に重要なのが下丹田。下丹田は下腹部にあり、意志や行動に関わる。

 導引法
 大気を「導き」体内に「引きいれる」ということから生まれた方法。呼吸とともに、身体をのびやかにゆったりと動かし、それぞれの経絡を意識して気血を循環させていく。
 基本呼吸 下丹田から上丹田に気を巡らせる 
 肺経導引 肺経をひらきつつ天の気を導入。肺経の井穴のある親指を意識する。拇指と示指で輪を作る。
 深くゆったりと。仙骨から丹田に向って。
 のびやかでおおらかに。
 静かで穏やかに。

■お薦め図書
『図説 東洋医療』山田光胤・代田文彦(学習研究社)
『気で観る人体 経絡とツボのネットワーク』池上正治 (講談社現代新書)
『中医学入門』神戸中医学研究会 (医歯薬出版株式会社)
『経絡と指圧』増永静人 (医道の日本社)
『東洋医学のしくみ』(新星出版社)
游氣塾 三島治療室
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三島広志
鍼灸師・介護支援専門員・介護予防運動指導員

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