2017/10/04

多門亭

以前から気になっていた料理屋さんへ行ってきた。新栄にある蔦で覆われた古民家だ。鰻と天ぷらと書いてある。その建物の佇まいから私の財布では賄えないだろうと、恐々と店頭の品書きを眺めた。ところが意外なことに普通の鰻屋より安価な設定。

それより目を引いたのが日に褪せたパンフレット。建物同様風雪に耐えた様子を窺わせる。しかも見覚えがある。

「味な人 味な店」

これはかの今池の伝説、夜の哲学者Mさんの書かれたものではないか。今も語り継がれる居酒屋六文錢のあの人だ。この記事はお店を閉められた後、キリンビールの依頼で名古屋内外の名店をルポされた時のものだ。今も池下の串カツ屋や伏見の元祖居酒屋に飾られている名シリーズ。

ここ多門亭もその内容の素晴らしさから今日も使用しているのだ。

入店すると美しい女将の接待を受けた。
素敵な坪庭を横目にメニューを眺めるとなんと裏表紙は先の「味な人味な店」。こちらはもちろん色褪せていない。

美味しい鰻を賞味したあと、話は自ずからこの書面に。女将の話では以前キリンビールのライターさんが来て取材して書いてくれた。上手に書かれてあるので今も使わせてもらっているとのこと。私がこのライターさんはよく知っている人だと伝えると喜んでメロンをサービスしてくれた。

「この女性はあなたですね」と、写真を指さすと、「少し前の私です」と美しく齢を重ねられた女将がはにかんで応えられた。

多門亭さん、Mさん、楽しいひとときをありがとうございます。

   一見の客に優しき蔦の店  広志


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