2020/07/26

慢性痛とは 半場道子著『慢性病のサイエンス』より

慢性痛とは 半場道子著『慢性病のサイエンス』より

慢性病とは(2頁)
定義
「治療に要すると期待される時間の枠組みを超えて持続する痛み、あるいは進行性の非がん性疾患に関する痛み」
通常は発症から3ヶ月以上続く痛みと考えられている。痛みが強くて日常生活に支障が出るような難治性の痛みは、期間が短くても慢性痛と考えられている。

慢性痛の分類
①侵害受容性(52頁)
末梢組織に炎症の源が存在して、感覚神経終末が炎症メディエータ(仲介者・筆者)によって刺激され、終わりのない痛みが続く場合をいう。変形性関節症(osteoarthritis:OA)、関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)、悪性腫瘍などのように、末梢組織に損傷と炎症が長期にわたって持続する場合、痛みはエンドレスに続いてしまう。

②神経障害性(64頁)
末梢神経が圧迫、絞扼、切断されたり、熱/科学的刺激、ウイルス感染、高血糖などで傷つけられたときに生ずる痛みを指している。脳梗塞、脳出血、頭部外傷などによって、中枢神経系の一部が損傷されたときの痛みも含まれる。

痛みの特徴:電撃が走るような激痛、自発痛、アロディニア(allodynia 通常では疼痛をもたらさない微小刺激が疼痛として認識される感覚異常のこと・筆者)を伴う特徴があり、hyperalgesia(些細な痛み刺激を強い痛みと感じる痛覚過敏)、persistent pain(末梢組織の外傷が治癒した後も、灼けつくような痛みが持続する)、dysesthesia(不快な異常感覚)などが続くことがある。

言葉による訴え:痛みの訴えは、「キリキリ」、「ピリピリ」、「ビリッビリッ」、「ジリジリ」、「ジンジン」、「鋭い痛み」、「剣山を突き立てられたような」、「針でチクチク刺されるような」、「電気が走るような」と表現されることが多い。

痛みが慢性化しやすい

整形外科領域多発する:Cー神経繊維の特殊性。神経可塑性が大きく、興奮性が長期に維持される性質があり、ひとたび損傷されると、生じた興奮性は時間とともに増大し、長期増強と呼ばれる現象を惹起する。

③非器質性(79頁)
痛みの源が末梢組織のどこにも同定されないのに、全身の多領域に拡がる痛み。消炎鎮痛薬や神経ブロックが奏功しない痛みであって、随伴症状は睡眠障害、意欲の低下、慢性的疲労感、うつ状態など多彩である。

例としては慢性腰痛、線維筋痛症、顎関節症、過敏性腸症候群などが挙げられるが、診断名のつけようのない不定愁訴の場合が多く、診断も治療も難渋する。

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