2010/07/15

経絡指圧への質問に答えて

鍼灸学校の学生さんから経絡指圧に関する質問メールが届きました。
熱心に勉強をしておられるようですので、返事を送りました。
以下の様な内容です。

質問事項1
経絡指圧で腹部の調節をした後に全身の施術をしてしまうと、もしかして状態が戻ってしまいませんか? 
この間補寫の手技していたら証が変わり、その新しい証に沿わずに施術をしたら元の証に戻ってしまいました


証は生きている証ですからどんどん変化します。そして階層性と時間性・空間性があります。
最初にクライアントが示す証は表層的なものです。途中で変化することが多いのです。そこには時間的変化もありますし、空間的変化もあります。
足のツボで肩こりを緩めるなどという遠隔操作は空間的変化ですね。あとになってじっくり効いてくるのは時間的変化です。
元に戻ってしまったとのことですが、もしかしたらそれはその方の基本的な証かもしれません。
ともかく変化したのですから気にしないで施術してください。仮に同じ証でも階層が深まっている場合もありますから。螺旋階段みたいに。

質問事項2
腹部の腎、小腸、膀胱の判別がしにくいのですが 診断要図の通りにみた方がいいのですか?


ピタリと手を当てていると概ね増永腹診図の様な変化が出てくることがあります。あるところが窪んでいくような、あるいは浮き出てくるような。それためには探らずじっと手を当てて待つことだと増永は言っていました。浮き出てきた形と腹診図との対比で判別してみてください。


初学のうちは丁寧に圧を届けることを第一にしてください。そしてあながたやっているように変化を感じ取る。これはいいことです。


経絡と証に拘泥すると理知が先に立ってしまいます。あらゆる現象は理論を超えた存在です。理論にこだわると現象を歪めてみることになります。それは理論ではなく理屈になってしまいます。現実には増永の理論通りにいくこともあれば、いかないこともあります。その場合は自分の技量の問題なのか理論的限界なのか、そこを考える必要があります。
増永先生が亡くなって30年になります。それでもこうして若い学生さんが書物を頼りに勉強してくれていることはありがたいと同時に、やはり増永先生は大した方だったのだと再認識しました。


先生は指圧を医療の中で普遍的に捉えようと理論化に努めました。ご自身が京都帝大の心理学のご出身でしたから心理学の考え方を中心に指圧を理論化したのです。さらに東洋思想と現代医学を基礎に膨大な経絡指圧をほぼ完成されました。その後、体操にシフトされた段階で惜しくも夭折されました。


現在わたしが指導している経絡導引はそのご遺志の延長にあります。
この質問をしてきた青年は一度治療に来て、その後一般向けの経絡エクササイズセミナーに参加された方です。その熱心さにわたしの若い頃を思い出してしまいました。

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