2010/04/25

塩の表示が変わります

今朝届いたメールマガジン『安心!?食べ物情報』に塩の表示が変わる旨が書かれていました。

これで自然塩とか天然塩などといった怪しい言葉に惑わされなくなりそうです。
こうした誤解を業界内部から是正しようとした試みだとか。
以下に書かれていますが

「塩の商売は人間が生きていくためにどうしても必要なものを供給
していくという社会的責任を担っています。その点で他の商品と違
うという自覚と誇りを持ってこの規約の実施に各社とも協力してき
ました。目先のイメージをあげてたくさん売りたい、高価に売りた
いという気持ちを抑えて、消費者に客観的な情報を提供して顧客に
満足していただくことが、塩という単純かつ必須の商品の信頼を向
上するものと信じています。」


実に立派なものです。
以下、メルマガの引用です。




-〔食べ物情報〕---------------------------------------------
「塩の表示」
------------------------------------------------------------

2008年4月21日に「食用塩の表示に関する公正競争規約」という
ものが施行されています。2年間の猶予期間があって、塩の表示に
ついては、今年の4月21日から完全に実施となります。

既に店頭にならんでいる塩の表示は変っていますが、意外と知ら
れていないと思いますので、紹介しておきます。

いろんなサイトで紹介されていますし、公正取引委員会からも詳
しい情報が出ています。
http://www.jftc.go.jp/pressrelease/08.april/08041804.html

「食用塩公正取引協議会」のサイトが最も詳しいです。
http://www.salt-fair.jp/

要領よくまとめているのが以下の記事です。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

「天然塩」「ミネラルたっぷり」など、食用塩の優位性を示すた
めに使われてきた広告表現が制限されるようになる。食用塩公正取
引協議会が策定した「食用塩の表示に関する公正競争規約」が4月
21日に完全施行となるためだ。規約は景品表示法に基づき、公正取
引委員会の認定を受けた自主ルール。必ずしも表現が拘束されるも
のではない。ただ、同規約に違反する商品は、消費者庁から直接、
警告などを受けることになる。

規約の対象になるのは、「塩化ナトリウム40%以上の包装された
食用塩」の販売業者や製造業者、輸入業者。包装されていない塩や
液体タイプの塩、「ごましお」や「塩こしょう」など混合塩は対象
外となる。

対象となる表示は、JAS法や食品衛生法によって定められた
「一括表示」と、自主ルールで定める「製法表示」やその他、商品
パッケージやパンフレット、DM、チラシ、ネット上で使用される
広告表現。

「一括表示」では、食用塩の名称を「食塩」「塩」に限定。原材
料名は「海水」「海塩(天日塩)」「岩塩」「湖塩」の四種類に限
定される。

また、自主ルールで定める「製法表示」は、製法を規約で定める
16の工程から選択。原材料名は、前出四種類の表示と共に、原産国
(国内産の場合は地名も可)の表示が必要になる。

さらに、商品名にも自主ルールを設けた。

例えば、原産地と加工地が異なる場合。同じならば問題はないが、
メキシコ産の原料を使い、商品名で「赤穂の塩」など加工地を使う
ケースもありうる。この際は、商品名の近くに原産国を表示するこ
とで商品名に使うことができる。

商品説明の中で使う表現も制限する。

「天日塩」「焼き塩」「藻塩」「フレーク塩」といった表現は規
約で定義づけており、これら表現は定義の範囲内で使うことができ
る。

一方、優良誤認を招く可能性のある表示は禁止する。「天然塩」
「自然塩」など塩を直接修飾する表現や「太古」「最古」「古代」
など根拠なく歴史性を強調する表現だ。

ただ、「特選・特級」といった表現は自社商品内に比較対象があ
れば表示することができる。

過去には別の公正競争規約の加盟企業に行政が直接指導したケー
スもあり、協議会加盟で景表法による指導を免れるものではない。
ただ、協議会では問題発生時に調査委員会を設置し、消費者庁と連
携して指導に当たるため、一定の緩衝材の役割を果たすことになる。

http://www.tsuhanshinbun.com/archive/2010/04/post-247.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

「自然塩」という名はなつかしいですね。私たちが扱っていたの
は「伯方の塩」でした。当時「伯方の塩」と「赤穂の天塩」の間で
論争がありました。「天塩」の色が茶色なのは、添加しているニガ
リに含まれる土(泥)の色だというのですね。

これは本当だったようで、その後「天塩」の色が変り、白っぽく
なりました。両方ともメキシコの天日塩を使っていましたが、消費
者にはあまり伝わっていなかったようで、商品名に地名を使ってい
ることもあり、「自然塩」は国産というイメージも強かったように
思います。

いわゆるフードファディズム(ある食品に対して、有益または有
害の情報を過度に評価する傾向)のハシリとして考えられる状態に
あったと思います。

当時は塩は専売制でしたので、これらの「自然塩」は塩の加工品
という扱いでした。その後専売が廃止され、既存のメーカーも同様
の商品を発売するようになり、ますます混沌とした状態になりまし
た。

ようやくそれが整理されようとしているわけです。この新しい規
約で塩に対する知識が広まることを期待します。よくある誤解はこ
んなものです。

・精製塩はニガリを除去しているので身体に悪い。

実は「自然塩」の方にニガリを添加しているものがありました。
添加していないものは、精製のレベルを下げて、少しニガリが残っ
ている状態のもので、「原塩」「並塩」と似たようなものでした。

ニガリを除去することが食塩を作るということなので、これは謂
われなき非難でした。漬物などに使うときは精製塩でない方がよい
のですが、これはあくまで用途に応じた使い分けという問題です。

・食塩が白いのは化学的に処理をしているから。

今どきこんなことを信じている人はいないと思いますが、茶色の
塩を信奉していた人にはこう信じていた人もいたのです。

ニガリを添加せず、真っ白な塩を売っていた「伯方の塩」は、こ
の誤解と戦っていたわけです。

・イオン交換膜でできた塩は「化学塩」だ。

最も原始的な方法では、海水を塩田に入れ、そのまま天日で蒸発
させてしまうという方法がありますが、最後に加熱して蒸発させる
までのプロセスとして、「濃縮」という工程があります。この濃縮
工程にはいろいろな方法があり、その一つがイオン交換膜を使用す
る方法です。実はやっていることは同じなのです。

膜を使った方法には、海水中の不純物を除去できるという利点も
あります。日本近海の海水を原料にするなら、膜方式の方が安心だ
と私などは考えています。


こういう誤解をなくすためにも、今回の規約では、「工程」を表
示しようという画期的な試みがされています。以下の項目を実際の
工程にしたがって列挙するというのです。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■イオン膜:塩分濃縮膜、イオン交換膜などの別名があるもので、
海水の塩分を濃縮する操作です。

■逆浸透膜:淡水化膜、ROなどと呼ばれるものです。海水を真水
にするときに出てくる濃い海水を利用するものです。

■浸漬:藻塩の製造で海藻を浸漬する操作です。

■溶解:天日塩、岩塩などを溶解してかん水(濃い塩水)を作る操作
です。

■天日:塩田、流下盤、枝条架、ネットなど自然力を利用して蒸発
させ、塩を結晶化したり、海水を濃縮したりする操作です。

■平釜:開放釜で煮詰めて塩の結晶をつくる方法です。

■立釜:真空式、加圧式など密閉釜で煮つめて塩の結晶を作る方法
です。

■噴霧乾燥:海水を霧状に噴霧して塩の結晶を取る方法です。

■加熱ドラム:海水を液滴にして加熱したドラム上で塩の結晶を取
る方法です。

■採掘:岩塩または湖塩を掘り出すことです。

■乾燥:塩の結晶を加熱して水分を除く操作です。天日乾燥は含ま
れません。

■粉砕:塩の塊を砕く操作です。

■焼成:塩の結晶を高温で焼くことです。380℃以上は高温焼成、
380℃以下は低温焼成といいます。

■混合:複数の原料の塩を混ぜたり、添加物を加えて混ぜる操作です。

■洗浄:水や塩水で洗って砂や「にがり」分などを除く操作です。

■造粒:塩を粒状などに成型する操作です。

http://www.salt-fair.jp/term/
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

今までのイメージでなく、事実を知らせていこうという意図がは
っきりとわかります。「自然」「天然」などの優良誤認表示をなく
すのは当然として、この「工程表示」はなかなかインパクトがあり
そうです。

全体としてすっきりとした、よい表示規約だと思います。この規
約作りを推進した、日本塩工業会顧問の尾方昇氏の話がありました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

塩の表示が変わります

成立の経緯は食用塩公正取引協議会ホームページ“経緯”に書か
れています。塩業界の皆様に大変お世話になりながら成立したもの
です。最初は業界団体もない中で成立することは困難といわれてき
ました。しかし業界の皆様の協力で優れた規約になったと思います。

食用塩公正競争規約は他の食品の基準に比較して、部分的にはか
なり厳しい規約になっていると思っています。例えば、伯方の塩や
赤穂の天塩のような地名が入った商品で原料塩を輸入している場合
は原料の塩が他国からの輸入であることが商品名と同じ面に記載さ
れることになり、今まであまり例のない思い切ったルールになって
います。これは伯方の塩、赤穂天塩が誤解を受ける表示はしないと
いう強い信念から生まれたものです。

自然、天然の用語を安易に使ってはならないということが消費者
からは強く要望され、その規制は塩に限らず他の食品でも厳しく扱
われています。これは塩に限らず食品の表示で自然、天然という言
葉を使うことであたかも健康に良いとかおいしいというイメージで
宣伝にも使ってきて、消費者に定義のはっきりしない言葉を使って
あたかもよい品質、価値ある品質と思わせるいわゆる思わせぶりな
表示の代表と考えられたためであろうと思います。今まで自由に使
っていた自然塩とかミネラルたっぷりの表現をやめることを同意し
たのも思い切った決断でした。

塩の商売は人間が生きていくためにどうしても必要なものを供給
していくという社会的責任を担っています。その点で他の商品と違
うという自覚と誇りを持ってこの規約の実施に各社とも協力してき
ました。目先のイメージをあげてたくさん売りたい、高価に売りた
いという気持ちを抑えて、消費者に客観的な情報を提供して顧客に
満足していただくことが、塩という単純かつ必須の商品の信頼を向
上するものと信じています。

正しい表示の実現には、業界だけでなく消費者が正しい表示を進
める原動力になっていただくことが第一です。うそつき表示や誇大
宣伝の表示を消費者の力で市場から締め出すことが正しい表示の実
現の最大の力になります。また、おかしいなという表示があれば積
極的に食用塩公正取引協議会とか消費者センターなどに意見を頂い
て是正していくことが大切だと考えています。

http://www.siojoho.com/s12/index.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

実に立派ですね。その他のすべての食品についても、同様の規約
ができるとよいと思います。一部の食品では「優良誤認」のフレー
ズが乱立していてとても見苦しいことを思えば、一時は同様の混乱
の中にあった塩業界がここまでやり遂げたことは素晴らしいです。

現在の混乱の主な原因を作っているのは、メーカーよりも流通業
界の方だと考えています。しかしメーカーにも恥を知らない人が増
えているのが気がかりなところです。

流通の人の場合、正しい知識がなくて、誤認情報を振り回してい
るということがよくあります。しかしメーカーの人間、特に開発な
どに当っている人は、当然自社の宣伝が誤認情報であるということ
は知っているはずです。これを黙認しているのはやはり恥ずかしい
ことだと思います。

2010/04/23

【脳梗塞】予防のために水分をたくさん取るべきか

【脳梗塞】予防のために水分をたくさん取るべきか
「大量に水分を摂取しても、脳梗塞や心筋梗塞の原因の一つといわれる血液の粘稠度を低下させるという根拠はない」

2010/04/22

やっぱり 脳トレ効果は疑問

「脳トレ」効果に疑問…英で1万人実験

4月21日12時34分配信 読売新聞
 コンピューターを利用した脳トレーニング(脳トレ)は、健康な人の思考力や記憶などの認知機能を高める効果は期待できないことが、ロンドン大学などの1万人以上を対象にした実験で分かった。

脳トレは世界的ブームになっているが、大規模な検証はほとんどなかった。英科学誌ネイチャーで21日発表した。

18~60歳の健康な1万1430人を三つのグループに分け、英国で販売しているコンピューターゲームをもとにした脳トレを1日10分、週3日以上、6週間続けてもらい効果を調べた。

最初のグループは積み木崩しなどを使った論理的思考力や問題解決能力を高めるゲーム、もう一つのグループはジグソーパズルなどを使った短期記憶や視空間認知力を高めるゲームをした。残り一つは、脳トレとは無関係のゲームを行った。その結果、脳トレを続けたグループでは、ゲームの成績は向上したが、論理的思考力や短期記憶を調べた認知テストの成績はほとんど向上せず、3グループ間で差がなかった。
最終更新:4月21日12時34分
読売新聞

2010/04/20

日経メディカルより

2010. 4. 20
本誌連動◇その患者指導、大丈夫? Vol.4
動脈硬化○卵の摂取を制限すべきか

魚の摂取量が多いほど心筋梗塞リスクは減少した。 

「コレステロール値が高いのですが、卵は食べてもいいでしょうか」。患者から一度はこんな質問を受けたことがあるはずだ。

確かに鶏卵は、1個当たり約215mgと多くのコレステロールを含んでいる。しかし、実際に卵摂取と心筋梗塞の関連を調べた厚生労働省研究班による多目的コホート研究(JPHC研究)の結果、卵摂取の多寡と心筋梗塞の発症リスクは関連しないことが明らかとなった。

この研究では、1990年代初めに4069歳の男女約9万人に対し、食事調査を実施。そのうち36%(約33000人)について血清総コレステロール値を調べたところ、卵の摂取頻度と血清総コレステロール値との間に関連性は認められなかった。

また、約10年の追跡調査の結果、卵を毎日食べる群に比べ、ほとんど食べない群でも、心筋梗塞の発症リスクは低下しなかった(図1)。つまり、この研究では、心筋梗塞などの動脈硬化性疾患を予防するために、卵を制限する根拠は得られなかったわけだ。

ただし、この結果からは「卵の摂取を控える指導が全くの誤りとまではいえない」。結果を分析した京都女子大家政学部教授の中村保幸氏はこう付け加える。一般住民が対象のJPHC研究で、卵の摂取頻度と血清総コレステロール値に関連がなかったのは、もともとコレステロール値が高い人が、動脈硬化を心配して卵の摂取を控えた可能性があるからだ。

80年に行われた大規模疫学調査(NIPPON DATA 80)では、卵の摂取頻度と血清総コレステロール値との間に相関関係が認められている。「卵の摂取と血清総コレステロール値の上昇には関連がないとは言い切れないので、やはり過剰な摂取には注意が必要」と中村氏は言う。

一方、「コレステロール値が高めで、動脈硬化を心配する患者の食事指導では、むしろ魚を積極的に摂取するよう勧めた方がよい」。こう話すのは、富山大和漢医薬学総合研究所教授の浜崎智仁氏だ。

前述のJPHC研究では、魚の摂取量が多いほど心筋梗塞の発症リスクは低下する傾向にあることが判明している(図2)。「魚に多く含まれるEPADHAなどには、動脈硬化性疾患やメタボリックシンドロームといった様々な疾患の予防効果が報告されており、魚の積極的な摂取のメリットは大きい」と浜崎氏は話す。

2010/04/17

按蹻導引4・17

足の太陰脾経
2010/04/17

地の気(水穀の精微)をいのちに変えるとされている。
消化発酵吸収の作用。
足の第一趾内側から脛骨内側を上り、大腿四頭筋の大腿直筋と内側広筋の隙間を通り、鼠径部拍動部から腹直筋外側を上行、腋下に終わる。

自分の脾経に触れてみる。
隠白から息を入れてみる。
大包から息を吐いてみる。

二点弁別と二点融合
経絡を観じる。

任脈督脈呼吸
鼻から空気を入れて督脈を通す。
頭部を下り背骨を降り尾骨から気海丹田へ。
保息して任脈を上り、齦交へ。
口からしずかに吐く。

全身の経絡を触れてみる。
細事にこだわらず、大まかなラインを辿る。

東洋医療は医学ではない。
医学と捉えると危険なことがある。
実感を大切に。
古典理論は理論ではない。
体験の集積を理論めかしたもの。
直観を大切に、現代医学の成果を尊重しつつ身体を見つめたい。

游氣会
464-0850 名古屋市千種区今池五丁目3番6号サンパーク今池303号
052-733-2253 h-mishima@nifty.com

2010/04/15

医学常識が少しずつ変化

日経メディカルオンラインより


以下引用
=================================
REPORT
2010. 4. 15
本誌連動◇その患者指導、大丈夫?
糖尿病○脂肪を控えてカロリーを減らすべきか
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糖尿病患者に低カロリー低脂肪食を勧める。うつ病患者に心身ともに休養してもらう。妊娠中に体重をなるべく増やさないようアドバイスする──。あなたは日々の診療でこんな生活指導を繰り返していないだろうか。

「常識」と思われてきた生活指導の中には、実は根拠がなかったり、新たなエビデンスが出て考え方が変わってきているものも多い。さらには、高血圧患者に対する厳格な塩分制限など、現実的には実行不可能な指導もある。本特集では、従来の「常識」を最新の文献を基に徹底検証し、エビデンスに基づいた効果の高い指導を紹介する。

「糖質制限食にすれば、糖尿病の血糖コントロールは確実に良くなる。肥満患者の減量にも高い効果があるのを実感した」。中村整形外科リハビリクリニック(兵庫県川西市)理事長の中村巧氏はこう話す。

糖質制限食とは、1日の食事の中でパンや白飯、麺類といった主食の摂取回数を制限し、炭水化物の摂取量を減らすというもの。炭水化物の摂取量に着目した点で、カーボカウントと同様の考え方に基づいている。

同クリニックでは、1日の摂取エネルギー量を12001600kcalとした上で、炭水化物の摂取量を制限する食事指導を行っている。患者本人や管理栄養士らと相談しながら、「朝食を抜く」「夕食時のみ主食を抜く」といった形で、炭水化物の摂取回数や量を決める。炭水化物を摂取しない分、おかずの量を増やしてもよいが、カロリーや脂肪の過剰摂取にならないよう工夫している。「糖質制限食は糖尿病や肥満患者に対し、高い効果がある」と話す、中村整形外科リハビリクリニックの中村巧氏。

同氏は2003年から、自院の肥満外来の患者約1000例に対し、この糖質制限食を運動療法と併用して行っており、半数以上が5%以上の減量に成功したという。「カロリーだけなく炭水化物を減らす食事療法は、コントロール不良の糖尿病を合併している肥満患者に対しても高い効果を認めた」と中村氏は話す。

同じく糖質制限食を実践する高雄病院(京都市右京区)理事長の江部康二氏は、「血糖値の上昇に最も影響しているのは糖質の摂取量。炭水化物の過剰摂取はインスリンの追加分泌を促して肥満の原因にもなるため、糖質制限食は減量にも効果がある」と説明する。

糖質制限食でHbA1cが低下
実は、糖質制限食の歴史は古く、インスリンが登場する以前に、糖尿病患者の尿糖値を低下させる食事療法として行われていた。その後インスリンなどの登場によって、血糖値は薬でコントロールできるようになった。一方で、高脂肪食による動脈硬化性疾患のリスクや、過剰エネルギー摂取に伴う体脂肪の増加を問題視する声が高まった結果、「糖尿病の食事療法を行うに当たって、血糖コントロールに加えて動脈硬化の予防も重要視するようになってきた」と神奈川県立保健福祉大教授の中村丁次氏は説明する。

そのような背景から、現在の食事療法では、個々の病態や身体活動などに応じて摂取エネルギー量を制限することを目標に置き、脂肪摂取を控え、摂取エネルギー量の5560%を炭水化物から摂取すべきとされている。これに対し糖質制限食は、血糖の低下を主目的とし、炭水化物の比率を2030%に抑える。

2型糖尿病患者に対する糖質制限食の血糖抑制効果は、メタ解析で検証されている(図1)。2型糖尿病患者を対象に行われた糖質制限食に関する論文を分析した結果、各研究で実施された食事療法の、摂取エネルギー量に占める炭水化物の比率が低いほど、HbA1cが低下する傾向にあることが示された。

19802006年に発表された、成人2型糖尿病患者に行われた糖質制限食に関する論文13報を分析。摂取エネルギー量に占める炭水化物の比率が低いほど、HbA1cの低下が認められた。GJはデータなし。(出典:JAmDietAssoc2008;108:91-100.
また、糖質制限食の減量効果についてもランダム化比較試験で検証されている(図2)。322人の肥満患者(平均年齢52歳、平均BMI 31)を対象に、糖質制限食、地中海食、低脂肪食のいずれかの食事療法を行ったところ、糖質制限食群では、低脂肪食群に比べ体重が有意に減少し、その差は2年後も継続した。

低脂肪食群と地中海食群(野菜、オリーブオイルなどが中心)はカロリー制限した。低炭水化物食群はカロリー制限せず、1日当たりの炭水化物摂取量を初めの2カ月は20gに抑え、以降は120gまで徐々に増量。糖質制限食群の体重は低脂肪食群に比べ有意に減少した。(出典:NEnglJMed2008;359:229-41.

長期安全性も示唆
とはいえ、炭水化物の摂取量を減らすと、摂取エネルギー量に占める脂肪の比率が相対的に高くなることから、心血管イベントのリスクの上昇を懸念する向きもある。

これに対しては、糖質制限食の長期安全性を示唆する次のような研究がある。1980年に食事調査を行った米国の女性看護師約8万人を、20年間追跡調査した結果、炭水化物の比率が最も低い糖質制限食群(炭水化物29.3%以下、脂肪46.9%以上)と、炭水化物の比率が最も高い「低脂肪食群」(同56%以上、同26%以下)の冠動脈疾患リスクは同等だったことが判明した(N Engl J Med 2006;355:1991-2002.)。ただ、糖質制限食の栄養バランスについてはまだ不明な点も多く、今後さらなる検証が必要だ。

個々の病態に配慮を
効果的な糖質制限食だが、もちろん万能ではない。「肥満を伴う糖尿病患者に対しては、やはりカロリー制限による減量が第一。肥満を伴わない糖尿病患者には、糖質のコントロールも有用と考えられる。それに加えて、血圧や中性脂肪など、それぞれの患者のリスクを勘案して指導する必要がある」と神奈川県立保健福祉大の中村氏は話している。

また、「糖質制限食は相対的に高蛋白・高脂肪になるので、血中クレアチニンが高値で腎障害がある場合や活動性膵炎の患者は適応とならない」と江部氏は言う。薬物治療中の糖尿病患者では、炭水化物の摂取量が少ないと低血糖を起こすことがあるので注意が必要だ。
==============================
引用以上

医科向けのサイトですから専門的で難しいところもありますが、概ね理解できます。

科学は常に転換するところに価値があるとは言え、健康問題は安定的であって欲しいものです。昨日までの常識が明日の非常識なることは珍しくありません。ここが相対的な科学の科学たる所以でしょう。宗教のように「最初に絶対的真理あり」ではありません。

医学常識が変わると何を信じていいのか分からないと不安になりますが、もともと危険域にある訳ではないので深く心配する必要はありません。
同時に常識も常に疑ってみることが必要ですね。