2013/05/11

初夏 目高 網戸

今年も俳句甲子園地方大会があるので、審査員をお願いしたいという連絡がありました。

名古屋地区は6月15日土曜日、名古屋市内で行われます。会場は未定ですが、毎年愛知県、岐阜県、静岡県から参加があります。

俳句甲子園とは毎年8月、松山市で行われる高校生のための俳句イベントで正式名称は

全国高等学校俳句選手権大会松山俳句甲子園

今年で第16回になります。

地方大会の優勝校はそのまま8月23日(金)~25日(日)松山で行われる本戦への出場資格を得ます。

大会に参加するためには前もって俳句を提出しなければなりません。そのための兼題というものがあります。今年の地方大会の兼題

 初夏
 目高(めだか)
 網戸

今の季節に相応しい兼題です。


さらに地方大会を勝ち抜いて全国大会へ出場するチームは別の兼題によって俳句を創ります。こちらの兼題はまだ公表されていません。



俳句甲子園の面白いところは季語という歴史の手垢にまみれた言葉に敢えて高校生たちが挑むことでしょう。彼らの若々しい感性が季語に染み付いた埃を払拭し、現代の季語として再措定され、同時に鮮度の際立つ俳句の誕生が期待されるのです。

また、俳句に興味を抱いた若者が次代の詩歌の世界に入ってくるきっかけにもなります。

俳句甲子園のHPに過去の最優秀句が掲載されています。第一回から順番に

 秋立ちて加藤登紀子が愛歌う   白石 ちひろ(愛媛県立松山中央高等学校)
 朝顔の種や地下鉄乗り換えぬ   森川 大和(愛光高等学校)
 裁判所金魚一匹しかをらず   菅波 祐太(愛光高等学校)
 夕立の一粒源氏物語   佐藤 文香(愛媛県立松山東高等学校)
 カンバスの余白八月十五日   神野 紗希(愛媛県立松山東高等学校)
 小鳥来る三億年の地層かな   山口 優夢(開成高等学校)
 かなかなや平安京が足の下   高島 春佳(京都市立紫野高等学校)
 土星より薄に届く着信音   堀部 葵(京都市立紫野高等学校)
 宛先はゑのころぐさが知つてをる   本多 秀光(愛媛県立宇和島東高等学校)
 山頂に流星触れたのだろうか   清家 由香里(愛知県立幸田高等学校 翡翠)
 それぞれに花火を待つてゐる呼吸   村越 敦(開成高等学校A)
 琉球を抱きしめにゆく夏休み   中川 優香(熊本県立菊池高等学校)
 カルデラに湖残されし晩夏かな   青木 智(開成高等学校B)
 未来もう来ているのかも蝸牛   菅 千華子(神奈川県立厚木東高等学校B)
 月眩しプールの底に触れてきて   佐藤 雄志 (開成高等学校A)

神野さんなどはすでに若手俳人として大活躍されています。
こうした感性の多くは若いうちに消費され、いずれは今のベテランと同じように陳腐な俳句を作るようになってしまいます。しかし強い創作意識を持続したり、批評精神などが芽生える人は詩人・俳人としての命脈を保つことになります。
そうでなければ私のように精神の中の一本の支柱として俳句と一緒に細々と歩んでいくという生き方もあります。

さて、今年はどんな俳句と出会うのでしょうか。
こちらの感性の錆を落として当日を迎えたいと思います。


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