2013/07/28

ケアマネ更新研修と再会



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ケアマネジャーは免許取得後も実務担当者に対し五年ごとの更新研修が義務付けられている。

しかも課程Ⅰが6日、課程Ⅱが3日もあるので日程のやりくりが大変。時間も10時から17時と長い。

義務なのに受講料も安くはない。


私は今年課程Ⅰのみ受講し、来年課程Ⅱを受ける。更新は来年なのだが一年でやり切るには負担が大きいからだ。



今日、会場で懐かしい人に会った。

以前江南市へ訪問マッサージに行っていた時、同じクライアントを担当していたデイサービスの管理者Mさんだ。

Mさんは私達が担当していたTさん(故人)が大好きだった女性で、Tさんは陽気な認知症が進行していたからいつも

「俺はMさんと結婚する」

と私や奥さんに話していた。奥さんも呆れて

「そう、それは良かったね」

と苦笑するしかなかった。


しかし実際はとても仲のいいご夫婦であった。私は実にそのTさんのマッサージに20年近くも訪問した。Tさんが40歳半ばから亡くなる60代半ばまでだ。

難病だったTさんは、最初は歩く訓練が可能だったが、薬の副作用で何度も圧迫骨折を起こしたり、何度か脳梗塞になり全くの寝たきりになってしまった。

元来とても明るい方で広島出身の奥さんと秋田出身のTさんはいつも掛け合い漫才をしているようだった。

もう亡くなって数年経つが時々ふと思い出す人だ。

今日、Mさんと再会し短い時間だったがTさんの思い出を語り合った。

そして以前『游氣風信』にTさん夫妻をモデルにこんなことを書いたことを思い出した。


蝮と鮫(マムシとサメ)
 わたしが在宅ケアに訪問するTさんは秋田の山村の出身。難病と脳卒中で10年来寝たきりながらも実に明るい50代半ばの男性です。
 テレビに動物などが写るとしばしば
「あ、あれ食ったごどある。旨いよぉ」
と言われます。
 画面にはニョロニョロと蛇などが登場中。
「山仕事さ、すでるどねぇ、マムシが出はってぐるがら、
  『おーい、御馳走さ出てきたぞー』
とみんな呼ばって捕まえでさ、皮をネ、ごやってビーと裂いでさ、串刺すにすて焼いで食うど、これが旨えんだなあ。こたえられんよー。
あー、もいっぺんでいいがら、マムシさ食いでーなー」
「何かタレつけて食べるの?」
「うんにゃ、なーんもつけんでも旨いよ。刺し身もええよ」
「どんな味?」
「どんなと言ってもなー。食ったごとねー人さ、教えるのむづがし。
ウナギかな、ウサギがな、いやいや、やっぱり蛇の味だな」
「ウサギも食べたことあるの?」
「あるよ、もぢろん。山仕事すでるとピョンピョン出はってぐるがら、
  『おーい、御馳走さ出てきたぞー』
とみんなを呼ばってさ、捕まえでさ、皮さ、ごやってビーと裂いで、焼いで食うど旨いよー」
「・・・・・・」
 かくのごとくにTさんの胃袋は動物図鑑さながら、何でも収まるようです。
 きつい仕事をしながらTさんを甲斐甲斐しく介護しているのが奥さんのS子さん。
広島県の山村出身。
「私らの里は広島の山奥じゃけーね、フカを食うんよ」
「フカってサメのことでしょ」
「うちらはフカゆうとった」
「広島と島根の県境の庄原から三次の辺りは全国でも珍しくサメを食べるんだよね。サメやエイは排尿器官をもたないからアンモニアが全身に貯まるので身が腐りにくいそうだよ。
 だから交通機関の発達していない時代から海から遠い山奥で珍重されたんだ。その代わりアンモニアが全身に染み込んでいて臭い」
「サメみでえな気持ぢ悪いもん食えるがっ。おっかあはろぐなもん食はってねえな」
「あんたこそ子供の頃からマムシやムカデばっかり食べとってでしょうが。わたしらそげなゲテモン食べたことないけえね」
「馬鹿こぐでねえ。マムシさゲテモンでねえ。それにそっだらムカデなんが食ったごとねえど。噛まれっと痛えったらねえんだがら」
「僕も広島の生まれでしょう。小学校の頃、おふくろの田舎へ帰省したらサメだのエイだのの料理を食べたよ。刺し身も食べたことがある」
「先生、そんなゲテモン、うまがったが?」
「はっきり覚えてないけど、エイの刺し身はネチャネチャして気持ち悪かった」
「ほれみれ。サメだらエイだら人様の食えだもんぢゃねえわ」
「あんたこそ。マムシの刺し身食うとって人がなんばゆうとるね。素人にはエイの刺し身は無理じゃわ。最初は火を通さないといけん」
「カマボコやチクワはサメの身を使用してるからみんな知らずにサメを食べてるよ」
「ほれごらん、あんただってフカ食べちょるんよ」
 Tさん宅では秋田弁と広島弁に囲まれて頭がぐらぐらする会話です。
 30年来の夫婦にしてからこの有り様ですから食の好みの難しさ。

游氣風信 No101「下手物(ゲテモノ)あれこれ」

三島治療室便り'98,5,1より


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