柳宗悦「手仕事の日本」
ことばの饗宴 岩波文庫
1993年8月
わたしたち身体調整に携わる者は自分たちを職人だと思っています。時々芸術家に なりたがるのですが、それでは患者さんの意向を無視した独りよがりの身体調整にな りがちです。
おおげさな言い方ですが、いのちの主役は本人自身です。その人達の健康に何らか の形でかかわるわたしは職人であるとの本分を逸脱することはできません。身体調整の主役は本人であり、実際に癒すのはその人の体に潜む治癒力に外ならないからです。
本人の意向を十分にたずね治癒力を生かす最良の方法を確認したうえで初めて身体調 整は成立するのです。
しかし方法においては信念を曲げることはできませんし、技術の修得向上には心を 砕きます。これもまた職人の習性でしょう。
普通の職人の仕事は柳宗悦の文章のように品物として後世に残りますが、わたした ちの仕事は無形ですからかかわりのあった方の心の中にのみ残ります。
時に臨んで最善を尽くす心掛けが何より大切になりますが、これは技術や知識の修 得と同じように生涯をかけて磨いていくしかありません。
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